Student Profile of Erika Harutani

なぜ修士号を取ろうと思いましたか?
高校生の時に、兵庫県川西市より姉妹都市交流の一環である「かわにし親善大使」として姉妹都市である米国のケンタッキー州に派遣された際の経験をきっかけに、多民族主義政策及び移民政策に興味を持つようになりました。わずか一週間の滞在ではあったものの、民族って何?共生って何?移民って?日本とあまりに環境が異なるけれどなぜこのように社会として成り立つの?そんな疑問が次々湧いてきたことを覚えています。
日本ではなかなか学ぶ機会の少ない分野であったため、実際に多くの移民を受け入れているオーストラリアで学ぶチャンスを模索していました。高校卒業後、交換留学制度が整っている同志社大学に進学しました。同志社大学は、ウーロンゴン大学と交換留学制度を設けており、これに応募し大学4回生の時に留学生活を実現化することができました。交換留学ではオーストラリア社会について知るために、幅広くさまざまな分野からクラスを履修し、オーストラリア学、アボリジニ学、文化・移民・教育、言語学などについて学びました。
この交換留学を通して巡り合ったのが、その翌年に履修することとなったMaster of Social Change and Developmentというコースでした。交換留学時代に学んだことをさらに深く追求し今後のキャリアについて考えたいと思ったことが最大の理由ですが、もう一つ決め手になった理由があります。それは、現地の学生だけではなく世界各国から学びにきている留学生とともに時間を過ごしたことで、交換留学の一年間が自身にとってかけがいのない経験となり、今後の人生に大きな意味を持つであろうと確信していたからです。さらにあと一年同じ大学で学びたいと考えたことが大学院進学のきっかけです。
このコースをどう思いますか?(レベル、内容の有効性)
Master of Social Change and Developmentのコースでは、学部の履修体系と同じように、授業に出席し、その各クラスの中で試験と論文をこなしていくというものでした。このCourse workと呼ばれる授業体系の最大のメリットは、私のように学部での専攻が異なる学生であっても理解を深めることができる点にありました。このコースのクラスは少人数制であり、教授と学生の距離感が大変近く、学生同士のコミュニケーションも気負うことなくオープンに行え、クラス内で行われるディスカッションやグループワークからも多くのことを学ぶことができました。時には、大学内にあるBarでお酒を飲みながらグループワークをしたりもしました。学生は様々なバックグラウンドを持っており、世界各国から老若男女問わず、現役の移民局職員、NGO職員、元青年海外協力隊員なども在籍しており、生の現場の声を聞けることが大変刺激的でした。教授からのレクチャーにおいては、理論や概念を学び、ディスカッションにおいて、ケーススタディなどを用いてそれぞれの視点から一つの物事をとらえる訓練ができたことがよかったと思います。
クラスの内容としては、幅広い知識を身につけることができました。「多文化主義政策・移民政策」のクラスだけでなく、「グローバリゼーションと市民権」「社会変化と開発」「労働関係、法律、組織」などのクラスを通して、相互に関連しあう問題について知識を深めることができました。
ウーロンゴンでの生活はどうでしたか?フレンドリーで住みやすく、オーストラリア人に会える場として、ウーロンゴンを他の人に勧めますか?
生活のしやすさ、治安の良さの点からいえば、Wollongongは問題なく留学生活を楽しめる場所でした。日本の都会の生活に比べれば不自由に感じる場面もあるかもしれませんが、それは郷に入れば郷に従えの精神で楽しむことができると思います。反対に、とても綺麗なビーチで友人とバーベキューを楽しんだり、ゆっくり流れる時間を楽しんだり、日本では味わうことのできない贅沢を経験することもできます。
地元の学生だけはなく、世界各国から集まる留学生とともに学ぶことができるという点において最高の環境であったといえます。留学生活を通じて得た最大の財産は、知識や学歴ではなく、そこで出会えた仲間との友情でした。私が知らない世界を知っている人の話を聞くことによって世界が何倍にも広がったと思います。この友情は一生守り続けたいと思います。留学後も、訪日する友人と会ったり、また友人を訪ねて周遊旅行をして交友を深めたりする機会もありました。留学後、オーストラリア留学仲間ということでさらに友人の輪が広がることも多くあります。社会人になって、学生時代の友人がいかに貴重な存在かを実感しています。
卒業後、どのような仕事をしましたか?取得した修士号を今後のキャリアやライフプランにどう生かしたいですか?
卒業後は、外務省の外郭団体である国際交流サービス協会が募集する派遣員制度に応募し、ニューヨークにある国際連合日本政府代表部で二年間仕事をしました。現在は、東京にある外資系証券会社に勤めています。
大学院において開発の分野を学ぶ機会もあり、国際連合という組織に興味を持ち始めていた私はその世界がどういうものなのかを実際の目でみて今後のキャリアを考えたいと思い、国際連合日本政府代表部での仕事を選びました。二年間、おもに二つの仕事をメインに行いました。一つ目は、ニューヨークにある国際連合本部を訪問する総理大臣、外務大臣、各大臣、国会議員等の出張が円滑に進むようにサポートすること、そして、二つ目の仕事が、日本がドナー国となり国際連合に設置されている人間の安全保障基金に関する業務です。側面支援的な仕事がメインであったとはいえ、さまざまな経験を積ませてもらえました。今まで知り得なかった国際機関やNGOの特色や、各国の外交政策や政治に対しても、敏感に反応するようになりました。
国際連合やそのほか関連するさまざまな組織で働く人と出会い、話を聞かせてもらう中でいろいろなことを考えました。世界には本当に多種多様な問題が存在し、解決すべきことがたくさんあります。小さなことからその問題解決に向かう人々の姿に感銘を受けたのは言うまでもありません。自身が職業という枠のなかでなくてもどのような形であれ、その一端を担える人間になれるように今後も自己研摩していきたいと考えています。
二年間の任期を終え、現在は外資系証券会社に勤めています。証券管理本部オペレーション部において日本株のClient Service Groupのチームに所属しています。大きなキャリアチェンジではないかと思われる方も多いと思いますが、私自身のなかで大切にしているベースはいつも変わりません。今まで自分自身が見えていなかった世界を、また違う側面からとらえているだけといえます。留学時代に培ったコミュニケーション能力、分析能力、調査能力などはどの分野でも生かすことができます。高校生で初めて経験したこと、大学・大学院での留学経験、国際連合日本政府代表部での経験、そして何よりもそこでの出会いが今の私につながっていると思います。
注: 現在、このコースは国際関係学に統合されています。